みなさん、資産運用の明確な目的はありますか?僕は経済的に自立して(FIRE)、残された人生を自分の思い通りに過ごすために運用しています。つまりはさっさと退職して好きなことやって暮らしたいというわけです。
しかし、いきなり下調べせず無職になるのはリスクが大きすぎます。会社員だと自分が暮らしていくのにどう言う費用がかかっていたり、優遇されているのかは案外知らないものです。特に税金関係については知らないことが多い印象、僕も含めて。
今回は僕が気になっていた住宅ローン減税関係です。テーマはこちら!
無職になって株式の収益だけで生活するとなった場合に住宅ローン減税は受けられるのか?
住宅ローンを抱えている方ならわかると思いますが、住宅ローン減税は家計に大きな影響を与えます。この減税制度の恩恵が無職になったら受けられなくならないか?と少し不安に思っていました。また、住宅ローン減税を受けないほうが得になることもあるかもしれません。今回はそれついて調べてきたので、みなさんと共有したいと思います。
まあそもそも住宅ローンを抱えてFIREしたいという発想が間違ってるかもしれませんが、それはここでは触れないことにしてください。
まず住宅ローン減税の仕組みを振り返る
最近住宅ローンを組まれた方ならご存知だと思います。この仕組みを平たく言うと、借入残高の1%にあたる金額を毎年所得税(所得税から引ききれない場合は住民税も)から還付される減税制度です。
僕が契約したときは最大10年間でしたが、2021年からは消費税増税の対策として13年間に延長されています。今や変動金利は0.5%程度ですから、金利が上がらなければ13年間お金を借りてお金をもらえる「逆ザヤ」状態になるわけです。これを適用しない手はありません。
一方で、このメリットを享受するには所得税を納めている必要があります。還付される原資がなければなりません。無職になると収入はありませんから所得税は納めていませんよね。しかし、株式の売却を特別口座で行えば、その利益に対して分離課税という形で納税は行われているとも言えなくもない。
この株取引による分離課税での納税は住宅ローン減税の還付元としての「所得税」扱いを受けられるのでしょうか?
分離課税で納めた所得税からも住宅ローン減税は受けられるが注意が必要
結論から述べると、分離課税で収めた所得税からも住宅ローン減税は受けられます。ただし、そのためには確定申告で株式の売買で得た利益にかかる税金のうち所得税を総合課税として申告せねばなりません。
所得として申告するということは、所得の金額に応じて考慮される国民健康保険や国民年金、住民税の優遇措置を受けられなくなる可能性があります。以下の記事ではFIREして所得を0と考えたときに受けられる優遇措置についてまとめています。
つまり、株式の収益を申告することによる得られる住宅ローン控除の効果と申告したことによって課税所得が増えたことによる優遇措置の減少を比較して、判断する必要があるということです。ややこしい。
また、僕のように住宅ローン控除を目的にする場合は、株式の利益にかかる税金(所得税15.315%+住民税5%)を所得税は年間所得に含める総合課税で申告して、住民税はそのまま分離課税として扱う方法がお得です。詳しくはここでは述べません(参照サイト)
※参照先サイトによると、年収が900万円以下の場合は上記のように所得税を総合課税、住民税を分離課税にするのがお得らしいです

結局、住宅ローン控除を受けたほうがいいのか?僕の場合で考える
というわけで、僕のケースを例に住宅ローン控除を受けるために確定申告をしたほうがいいのか考えてみましょう。前提はこちら。
- 収益は株式売買のみ、税引き前年間437.5万円(20.315%税引き後 350万円を想定)
- 住宅ローン残高は3000万円(住宅ローン控除額は30万円)
- 僕、妻、子ども2人 家族
納めた所得税と住宅ローン控除で戻ってくる金額
上記の僕の場合を考えてみます。もし、分離課税のままにしておくと納めている所得税額は 437.5万円 x 15.315% = 67万円 です。
これに対して総合課税にした場合を国税庁のサイトを参照して計算してみると、43.5万円になります。

さらにここから住宅ローン控除30万円分を受けられるので、実質的な所得税は43.5 – 30 = 13.5万円です。
というわけで、所得税を総合課税にしたら 67 – 13.5 = 53.5万円 お得ということになります。借り入れ残高がもっと大きい人であれば、その分さらにお得です。
住民税はどうなる?
また知立市の場合、住民税は以下の計算式で算出されます。総合課税であれば課税所得が437.5万円あるので、下の式に従って計算します。
この場合だと
- 均等割:5500円 x 2人 (未成年は非課税)= 1.1万円
- 所得割:(437.5 – 44) x 10% = 39.4万円
で合計40.5万円かかるところです。ここで前述の「住民税は分離課税」を適用します。
住民税は分離課税としておけば上記の算出式は関係なく、特定口座で引かれる分そのままの 437.5万円 x 5% = 21.9万円で済みます。
そのため、上記を勘案すると、確かに住民税は分離課税のままにしておくのが正解のようです。総合課税にしてお得にはなりません。

国民健康保険は?
僕の住む知立市の場合、減免が適用されないデフォルトでは所得割を除いて年間で (医療給付分22,000 + 後期高齢者支援金分10000) x 4人 + 15,800 + 7,100 = 150,900円もかかります。さらに所得割 23.2万円をプラスされ、合計で約38.3万円かかります。もちろん減免措置は受けられません。

ちなみに無職の場合は年間で (医療給付分22,000 + 後期高齢者支援金分10000) x 4人 x 0.9 + 15,800 + 7,100 } x 0.3 = 41,430円です。
そのため、この場合は株式の収益の所得税分を総合課税で申告することにより、年間で38.3 – 4.143 = 34.2万円支払いが増えることになります。
国民年金は?
国民年金については払うのが得か損かの考え方もあるので、一概には言えません。話を簡単にするために国民年金を単純な支出として捉えて考えてみましょう。
所得を総合課税で申告することにより、当然ながら減免措置を受けられなくなってしまいます。そのため、我が家の場合は年間で16610 x 2 x 12ヶ月 = 約40万円を納めなければなりません。高すぎぃ・・・。

特に工夫をしない場合は住宅ローンを諦めたほうがよさそうだ
以上の話を整理すると、以下のような結論になります。
①国民年金は元々減免処置せずに払うつもりだった場合(年金を満額もらうために)
住宅ローン控除を受けたほうがお得です。
- 所得税で53.5万円減税
- 国民健康保険で34.2万円支払い増
→ 53.5 -34.2 = 9.3万円 お得になります。借入残高3000万円より多ければ、その分さらにお得になる計算です。
②国民年金なんてアテにしてないから年金もらえなくても減免処置してもらうつもりだった場合
特に何もしないほうがお得です。上記に加えて支出が年40万円増えるので
9.3 – 40 = -30.7万円 損をします。年金の減免がどこまでアテになるものなのかはわかりませんが・・・。
番外編:もし個人事業主として青色申告していたら?
僕はFIREした後は個人事業主(フリーランス)として、ちょこちょことやりたい仕事をしようと画策しております。そのため、当然青色申告をするつもりです。青色申告についてはこちらのサイトをご覧ください。詳しい話はわからないのでw
端的に言えば、青色申告すれば課税所得から65万円控除されるという素晴らしくお得になる制度があります。これだと上記で支払っていた43.5万円の所得税が0になるわけです。所得税が0なので当初の目的であった住宅ローン控除が受けられなくなってしまいますが、青色申告によって13.5万円お得になる計算です。
それでも国民年金をどう扱うか次第で、株式の所得税を分離課税にしといたほうがお得だとも考えられる結果ですね。
結論:国民年金を払い続けるつもりなら株の収益から住宅ローン控除を申請しよう
話が最初とかなり別な方向に飛んで行ってしまいました。すみません。
結論としては、当人が国民年金をどう考えるかに帰着します。課税所得を0にして国民年金の減免を受け、その代わりに将来受け取れる年金が減るリスクを許容できるか?次第というわけです。
僕の場合、以前の記事にもあげましたが国民年金の利回りはメリットが少ないと感じています。国民年金の利回りはこのサイトが参考になるので、見てみてください。75歳まで生きないとプラスにならないらしい。それなら自分で運用したほうが絶対いいと思います。ただ、何でも言いますがこれは僕個人の考え方です。老後の不安がないほうがいい方もいらっしゃるでしょうから、それぞれ自分のライフスタイルに合わせて考えることが大事でしょう。

この検討を踏まえて、僕はフリーランスの収入が増えない限りは住宅ローン減税は諦めることにしました。みなさんはいかがでしょうか?
※当方は税金について素人なので、間違いがあった場合に責任はとれません。あしからず・・・
おまけ:資産運用おすすめ書籍
僕が実際に読んで「ほんとうに良い本だなぁ〜」としみじみ感じた名著をご紹介します。どれもめちゃくちゃ良い本ばかり。インデックス投資を始めたての方におすすめです。
以下の中にはKindle Unlimited(月々980円 読み放題)のサービスで利用できるものもありますのでチェックしてみてください。Kindle Unlimitedは無料期間もたまにあります、いつかはわからないけど。
僕が最近読んで感銘を受けた本です。米国の著名投資家ハワード・マークス氏の著書で、彼の著書はなんとあのウォーレン・バフェットのお気に入りらしいw バークシャー・ハサウェイの株主総会でこの本を配ったというウワサも残っています。ハワード・マークス氏自体はインデックス投資にも一目を置くアクティブ投資家で、市場平均に勝つのは難しいと認めつつもどうすれば勝てるか?を色々とアドバイスしてくれる本です。
僕が一番好きな本。難しい数学的な知識を必要とせず、現代ポートフォリオ理論(≒ランダムウォーク理論)をかじれます。正直な感想を言うと全ての書いてることが興味深かったわけではありません。なので隅々まで読んだわけではないですが、理論のところはとてもわかりやすいのでおすすめです。これ読んでからWikpedia見たらだいぶ理解が進みました。
上記の本に加えてもう少しファイナンスを詳しく知りたい方向けにおすすめです。CAPMの考え方やそれをもう一歩発展させた3ファクターモデルのことも理解できます。ほかにもプライシング理論やリスク管理などの基礎知識もこれで十分わかるかと。
インデックス投資の名著中の名著です。個人投資家にとっての投資は「ミスった者が負ける」敗者のゲームになった、というのがタイトルの由来。ここで言うミスとは、市場動向に動揺して売買してしまうことを指します。いいからインデックスホールドしとけ、という本。
インデックス投資の父でありVanguard創業者のBogle氏の名著です。僕が最も尊敬する偉人でもあります。その先見性と残された功績には尊敬の念しかありません。内容はインデックス投資のベーシックな内容ですが、後半には債券との組み合わせ論などにも言及されています。全部が全部同意見というわけではありませんが、インデックス投資を志す者であれば必読書とも言ってよいかと。
ランダムウォーク理論(株価の動きはわからないという前提を置く理論)について、歴史を交えて語った本。これも名著と言われています。理論の概念はざっくりとわかるかと。歴史の部分が長くて、そこは読み飛ばしました。
本をほとんど読まない僕が唯一知ってる作家さん、橘玲さんの本。とても読みやすい文章で書かれていて、こんな文が書きたいなといつも思ってます。僕が海外株を中心に買っているのはこの本の考え方に近いです。
この本は僕が初めて読んだ投資関連の書籍。当時、個別株で失敗し、偶然思うがままに買い付けた米国株インデックスETFに出会い、それにいい感触をもっていました。その感触を自信に変えてくれた本です。