EVを選ぶポイントはこれだけ!自動車エンジニアが考える2つの重要ポイントを伝授しよう

自動車
スポンサーリンク

みなさん、EVを(電気自動車)に興味はありますか?ぼくはモーターのトルクフルな走りにとても魅力を感じています。

ご存知のとおり、昨今はどこもかしこもEV開発。自動車エンジニアとして働くぼくの業務内容も必然的にEVに関わることが多いです。そうやって自分自身がEVを勉強していく中で、スペック表に載っていないEVの欠点やそれを補う技術がわかってきました

重要なポイントはたった2つです。今回はそれを共有しつつ、現状その2つを満たす車両を調査してきましたので紹介したいと思います。みなさんがEVを選ばれる際に後悔しないように役立てれば幸いです。

①ヒートポンプシステムを搭載している

EVの弱点として「航続距離」の問題があることは有名だと思います。基本的にスペック表の航続距離は搭載する電池容量に比例して伸びますね。

しかし、スペック表に載っていない重要ポイントは「空調作動中の航続距離」です。空調はかなりのエネルギーを要するのに、スペック表の航続距離算出には計上されてません。ほとんどの人は空調をつけて走るでしょうから、

思ってたよりも航続距離走れないんだけど!怒

と感じられる人が多いんだとか。わからんでもない。

さらに、その空調の中でも問題になりやすいのが「冬場の暖房」です。普通ガソリン車は暖房をエンジン冷却水で捨てていた熱(廃熱といいます)を使って暖房しています。なので、暖房で大きく航続距離が短くなることはありません。

一方で電気自動車には廃熱がありません。エンジンありませんからね。なので、電池のエネルギーを使用して暖房します。なので、冬場に暖房をつけると航続距離が半分になった!というのもよくある話です。

多くのEVは電気の熱(ジュール熱)で暖房する電気ヒーターを採用しています。これは1のエネルギーで1の暖房熱を生み出すもの。家庭用だとオイルヒーターがイメージに近いでしょうか。めっちゃ電気喰いますよね、オイルヒーター。ぼくはオイルヒーターは絶対に使いません。

デロンギ オイルヒーター NJM0505 DeLonghi | 新着 | plywood(プライウッド)
オイルヒーター。「暖かさが優しい」と言われるらしい。どういう意味か教えてほしいです

対して1のエネルギーで2〜3の暖房熱を生み出す技術が冒頭の「ヒートポンプ」です。家庭用だとエアコンと同じ原理です。※詳しい原理は日産ホームページをご参照ください

heat_pump_cabin_heater.gif
日産ホームページより引用。外気から熱を汲み上げて室内を暖める技術です

ヒートポンプは電気ヒーターよりもかなり効率が良いので、冬場に暖房ONで半分(暖房OFF時の50%)になっていた航続距離を半分取り戻す(暖房OFF時の75%)くらいの効果があると言われてます。実用上、絶大な意味を持っているんです。

ただ、技術的には電気ヒーターに対してかなり複雑でコストもかかります。実はEVで先進的なイメージのあるテスラをもってしても、最新のモデルYがヒートポンプ初採用モデルだったりするんです。

このヒートポンプ、スペック表には表れないので要注意です!

リーフ S FF CVT(無段変速車)(2012年11月) のカタログ情報(10079961)|中古車の情報なら【グーネット中古車】
初代リーフは2012年11月のマイチェンでヒートポンプを搭載、冬の航続距離をグンと改善しました

②バッテリーが水冷方式である

EVのもうひとつ欠点は「リチウムイオン電池の劣化」です。これも有名ですね。EVに使われているバッテリーはスマートフォン電池のでっかい版だと思ってもらえればOKです。

みなさんはスマートフォンを何年で買い替えますか?また、その買い替え理由は何でしょうか?大切に使っていたとしても、5年ほどでバッテリ劣化を理由に買い替える方が多いと言われてます。

https://research-panel.jp/rpdr/view.php?eid=480045より引用。紛失や故障がなければバッテリー劣化がトップです。

これと同じことがEVにも言えます。かつて日本で最初に登場した本格的EVである「リーフ」もバッテリ劣化が激しく、中古価格が暴落。かなり叩かれました。※参考記事

こんなにも劣化がひどいのには訳があります。それが「バッテリー冷却設計」です。リーフは現行型含めてバッテリー冷却機構がありません。一部で「自然空冷」と呼ばれていますが、それは冷却機構が無いという意味です。勘違いなきよう。※参照記事

バッテリーは温度管理が非常に重要です。よく「人肌程度に収める」のがよいと言われてます。高温だと劣化するし、低温だと電力を取り出しにくくなります。また、それを局所的にも発生させず、バッテリーパック全体を均一な温度にすることが求められます。局所的な電池の劣化が全体の足を引っ張るためです。

バッテリー冷却方式にも色々ありますが、この「均一に冷やす」という要求に対して、水冷に勝る方式はありません。理科で習ったとおり、水は比熱の大きい液体です。小さい温度差で多くの熱を移動させられるのです。

ホンダクラリティPHEVの冷却システム。冷却水でバッテリを冷やしています。

この性質がバッテリー冷却設計にぴったりです。水冷はバッテリーに温度分布をつけない設計がしやすいんですね。ただ「コスト」が欠点。リーフは電池寿命よりもコストを重視して、無冷却を採用しているわけです。この辺りは各メーカーの考え方が出てくるので面白いですよね。

実際に、バッテリー冷却方式は最近は水冷方式が増えてきています。効果は歴然で、早くから水冷方式を採用してきたテスラのバッテリーは劣化しにくいことで知られています。※参照記事

テスラモデルSのデータ。20万キロ走っても電池が90%近く残っている驚異の寿命です。

一方でバッテリー冷却機構がないリーフは劣化が顕著です。※参照記事

ちなみに急速充電時の充電速度もEVの欠点に挙げられますが、水冷方式は冷却設計を大能力化しやすいため、充電速度も高い(=短時間で充電できる)傾向にあります。急速充電は冷却との戦いなのです。

これからEVを選ぶのであれば、バッテリーが水冷式の車種にしといたほうが良いと思いますね。

じゃあヒートポンプ搭載でバッテリ水冷式のEVってあるの?

というわけで、ぼくがわかる範囲で調べておきました。もしEVを検討されている方がいましたら、参考にしてください。もし他にも該当車種があれば、ぜひDMで教えてください!

①Nissan ARIYA (アリア)

いきなり現時点未発売の自動車を出してすみません。先日、発表された日産アリアは流行りのSUVタイプEVです。価格は540万円程度と予想されています。結構高いです。ただ、後述の車両と比較すると、ものすごく頑張っていることがわかります。

Nissan Ariya on white background
昔のムラーノに似てる気がするのは僕だけでしょうか

記者会見などの発表でもヒートポンプを搭載しつつ、バッテリーは水冷方式である旨が述べられています。

リーフのお客様からの声で多かったのは、長距離移動時の急速充電の安定性でした。バッテリーは熱い状態でも冷えている状態でも充電効率が悪くなる傾向があります。そこで我々はヒートポンプシステムと同調し、バッテリーを常時30度に保つ温度調節機構を取り入れました。

モーターやバッテリーは、リーフに搭載しているものを流用・応用したものではなく、アリアのために新開発されている。モーターは高速巡航時の消費電力を低減したことで、一充電の航続可能距離の延長に貢献。2WD/90kWhモデルにおいては最大610km(WLTCモード・日産社内測定値)の走行が可能となる実力をもつ。また、バッテリーの温度を一定に保つことができる水冷式の温度調節システムを搭載。

テスラ モデルY

テスラ モデルYは2020年3月に登場。アリアと似たようなSUVタイプのEVです。これも日本未発売です、すみません。。。

これも日本で購入はできませんが、モデルYはヒートポンプ式の暖房を備えたテスラ初のモデルです。こちらの動画で解説されています。ヒートポンプシステムとしても斬新な設計で面白いです。

けっこう斬新なシステムしてます

バッテリーについても、この動画を見る限り冷却水が通るホースがついていますので、これは水冷式と見て間違いないでしょう。

ワンタッチタイプの冷却水ホースがついてますね

メルセデス・ベンツ EQC

上記の2車とは違ってベンツのEQCは日本でも購入できる車両です。1080万円〜という半端ない高級車価格ですが・・・。

The EQC
アリアやモデルYと同じようなSUVタイプ。最近、ほんとにSUV多いですね

この動画(記者発表会)の21:30あたりから、EQCのヒートポンプシステムが紹介されています。

ヒートポンプシステムを搭載しているらしい

17:23あたりではバッテリーに冷却システムを用意している旨が記載されています。下の方にあるプレートと上図のヒートポンプシステム構成(中央上に”高電圧バッテリー”とある)を見た感じ、水冷と見て間違いなさそうです。

下のほうのプレートがいかにも水冷っぽい

ジャガー i-PACE

ジャガーのi-PACEも数少ない日本で購入できるモデルです。こちらも976万円〜という富豪向け価格ですが・・・

i-PACEも例にもれずSUVタイプです。しかも全部同じような車格です。ここが売れ筋なんでしょう

ヒートポンプについては公式ホームページに記載がありました。ジャガーはちゃんとヒートポンプを魅力としてアピールしてますね。

公式サイトより引用。しっかりとヒートポンプをアピールしてます

バッテリー冷却方式はベンチマーク会社(A2mac1)の動画から水冷方式であるのが伺えます。バッテリーパックに冷却水ホースが接続されてますね。

A2mac1 YouTubeチャンネルより引用。青いホースがバッテリーにささってます。

結論:EV買うならアリア発売を待ったほうがいい

いかがでしたでしょうか?ヒートポンプとバッテリー水冷というたった2つの条件だけでも、車種はかなり限定されてしまうのがわかるかと思います。とにかくコストのためだと予想しています。

アリアの540万円が圧倒的に安く感じるくらい、ジャガーとベンツは高価です。価格面から見たらアリア一択だと思いますね。ただ、これは日本だけの話で、おそらく海外ではガチンコのライバル価格で勝負しているのではないでしょうか。日本における輸入車ってめちゃくちゃ高いので。

現時点はアリアしか目ぼしい車両はありませんが、こちらの記事でトヨタが2021/4/19の上海モーターショーで力の入ったEVを発表するとウワサされています。ここまで紹介してきたヒートポンプ、バッテリー冷却方式に加え、どれくらいの価格で攻めてくるかが非常に楽しみです。

トヨタが電動車専用プラットフォーム「e-TNGA」第1弾となる新型SUVを4月に予告
carview より引用。こちらも例にもれずSUVとのウワサです。

追記:メルセデスから次に出るEVは水冷でヒートポンプありでかなり安くなってるらしい

電気自動車の参考書籍

タイトルとURLをコピーしました